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開館25周年記念コンサート ジョワ・ド・ヴィーヴル ー 生きる喜び

鈴木優人さんからのメッセージ

公演に寄せて

新垣 隆

 このプログラムの内容は、濃く、大胆で冒険的であると同時に、理屈抜きに楽しい、エンタティンメントとも言えるのではないでしょうか。
 一日のプログラムとして、一曲一曲をきちんと提示して聴いていただくのと同時に、全体も一つの曲として楽しめるような体験が味わえる構成になっていることに、とても感心しました。優人さんとは、彼が音楽監督を務めるアンサンブル・ジェネシスのレジデントコンポーザー、ピアノ演奏という立場でも、お仕事をご一緒させていただいています。この記念すべきコンサートの構成には、まさに、アンサンブル・ジェネシスでの活動も含めた、彼の一貫したスタイルと、サービス精神がよく現れています。
 実は、メシアンの「トゥーランガリーラ交響曲」は過去に、東響の生演奏を聴いたことがあるのですが、今回、同じ東響の演奏で、しかも優人さんの指揮で聴くことができることを楽しみにしていますし、いろいろなスタイルの音楽をいっきに体験できるのもこのコンサートの大きな魅力だと思います。
 11月1日は、きっとワクワクするコンサートになることでしょう。
 私も聴き手の一人として、この日がとても待ち遠しいです!

新垣 隆(作曲家・ピアニスト)

なぜ今、鈴木優人なのか?

まず第一に、稀有の「総合的」な音楽家だからである。作曲家、オルガニスト、ピアニスト、チェンバリスト、指揮者、演出家、プロデューサーとして、すべての領域での活動が関連し合いながら、接した人の心を一撃でとらえるような、生き生きとしたきらめきを放っている。
第二に、中世、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、そして現代に至る「幅の広さ」である。鈴木優人ほどこの"世紀をまたぐ"という行為を、自在かつ高度に成し得ている音楽家は、滅多にいない。マショーとバッハとモーツァルトとリゲティとメシアンと自作とを、即興演奏を交えながら、一夜にして演奏することのできる音楽家の存在は、細分化・専門化の行き過ぎた袋小路に陥っている今の時代において、あまりにも魅力的である。
第三に、「心」を感じさせる音楽、という点においても傑出した魅力があること。音楽とは、博物館のガラスケースのなかの展示品とは違い、いま私たちが暮らしている社会の空気を共に呼吸する、生きた存在でなければならない。そうした真の意味での「ライヴ」ということを、鈴木優人の演奏は常に感じさせる。謙虚で、鋭くて、挑戦的で、優しくて、おおらかで、意志的。そして何よりも、世の中で起きていることのすべてが、彼の音楽には反映されうるし、心から反映しようとしているように思える。
これからの音楽の未来を切り拓く最大のキーパーソンの一人、鈴木優人の集大成を聴くことができるという点でも、今回の多彩なプログラムを擁したコンサートはまたとないチャンスである。

林田直樹(音楽ジャーナリスト)

「生きる喜び」を分かち合う、祝祭の日

コンサートホール__そこは非日常的な空間であり、人々が濃密なひと時を過ごす場所。日々の営みの中で、わたしたちは何か痛切な願いを抱いたり、わき出る愛情の不思議さに驚いたり、輪郭を持たないさまざまな感情に震える。古今の音楽家たちはそれらに形を与え、ホールという場を通じて人々と分かち合ってきた。だからこそ、ホールを後にする私たちは、その時間を深く生き抜いたような充実感、高揚感に包まれている。全身がほぐされ、血流の勢いが増したかのように、より確かなる「生きる喜び」を実感する。

"ジョワ・ド・ヴィーヴル~生きる喜び"。
このコンサートのテーマは、東京芸術劇場が人々の集う場所であり続けるために掲げた、大切なモットーのように思う。25周年を記念し、ここに祝祭の日の幕が上がる。輝くような知性と音楽への深い愛情に満ち、音楽界の未来を担う鈴木優人氏は、14cから21cの音楽宇宙を自在に行き来し、私たちがこのテーマと真摯に向き合うことのできる作品を選んだ。

真っ白な光に包まれるようなグリニーのオルガンの響き、
ペルトの合唱曲が伝える柔らくも切実な願い、
「アヴェ・ヴェルム・コルプス」でモーツァルトが晩年に見た天上の世界、
言葉の持つ強さを淡々と訴えるラングの「愛は強いから」、
(第1部「祈り」)

小出稚子の「玉虫ノスタルジア」に聴く、音の生成と混ざり合いの美しさ、
「火の鳥」でストラヴィンスキーが現前させた力強さ、
メシアンが「トゥーランガリラ交響曲」で描いた神秘に満ちた愛の世界、
(第2部「希望と愛」)

――プログラムはさながら、さまざまな想いを込めて丹念に織り上げられていく巨大なタペストリーのようだ。祈り・希望・愛という、目には見えず不確かだけれど、私たちの感覚を研ぎすまさせてくれる強い想いが、きっと内側から溢れ出ることだろう。
そう、「生きる喜び」とともに。

飯田有抄(音楽ライター)

出演者からのメッセージ

小㞍健太さん 原田 節さん 石丸 由佳さん
児玉 桃さん
小㞍健太

 同年代で活躍している音楽家の鈴木優人さんとオランダで出会い、こうして日本で東京芸術劇場開館25周年の記念コンサート「 ジョワ・ド・ヴィーヴル ― 生きる喜び」 に参加させていただくことになり、とても嬉しく思っています。

 ダンスは、音楽と身体そして創造が必要不可欠です。今回は、コンサートにダンスをどのような要素で取り入れるのかがとても重要になると思います。優人さんからコンサート自体を一つの作品『祈り』そして『希望と愛』として創造していきたいとお話を伺い、演者は個々に存在しながらもひとつの創造空間になり得ると思いました。私が出演する第一部では「祈り」をテーマにしています。日本人の私たちは祈るということをあまり習慣にしていませんが、この機会にその真意を音楽の響きとダンスでどのように表現できるか模索し、観客のみなさまに生きる喜びが伝わるコンサートにしていきたいと思います。最後に、この機会を与えてくださった鈴木優人さんと東京芸術劇場に深く感謝いたします。

小㞍健太(ダンス)

原田 節

© Yutaka Hamano

 東京芸術劇場の開館25周年、心よりお祝い申し上げます。またその記念コンサートに僭越ながら参加させていただけますこと、光栄かつ望外の幸せに存じます。初めてこちらの舞台で演奏させていただいたのは、まだピカピカ出来立ての新しいホールだった1991年、サー・ラトル指揮バーミンガム市響との共演だったと記憶しておりますが、その時と同じ作品、メシアンのトゥランガリーラ交響曲を再び、今回は気鋭の若き鈴木優人さんとの初共演、ピアノにはもう何度ご一緒したことでしょう、いつも驚くべきエネルギーかつ繊細な色彩で、美しいイントネーションを奏でてくださる児玉桃さん、そしてオーケストラも実はこのメシアンを初めて演奏させていただいた東京交響楽団。そしてその91年以来ずっと忘れずにいるのが、ステージの裏やロビーで支えてくださるたくさんの暖かく熱意あるスタッフの皆さま、こんな素晴らしい方々との本当に心躍る待ち切れない時間は、僕だけでなく当日いらっしゃるお客様にとっても、誰にとっても唯一無二の経験となることでしょう。

 メシアン作品については他の方と重複するかもと危惧しつつ、簡単に述べておきます。メシアンのほとんどの作品を貫く、カトリック教義、鳥の歌、またリズムと色彩といった音楽的要素で厳格に作曲されつつも、現世での男女の愛を深く高く描き切った、直感的に美しいと感じられる瞬間が次々に訪れる傑作と して、20世紀後半の作品としては、最も早くオーケストラのレパートリーとして定着した作品であることは疑いがありません。また委嘱したボストン交響楽団への敬意でしょうか、ジャズやガーシュインといったアメリカ音楽の要素がちりばめられているのもメシアンではとても珍しいですし、初演を司ったピアニスト、イヴォンヌ夫人との最も高潮した時代に作曲された反映で、ワーグナーのトリスタンとイゾルデも重要なテーマとして登場します。
 さあ、シートベルトをしめて、あなたも素敵な時空の旅をご一緒いたしましょう。

原田 タカシ(オンド・マルトノ)

石丸由佳

 この度は芸術劇場の25周年という記念すべき節目に立会い、ホールのオルガンを鳴らすことができ大変光栄に思っております。学生の頃からオルガン・ランチタイムコンサートに足繁く通っていたので、個人的にも感慨深いものがあります。

 今回演奏する曲目は、私の大学時代の先輩でもあるアーティスティックディレクター、鈴木優人さんとのご相談で決めました。16世紀から現代までの、4か国の作曲家の作品を一気にお聴きいただきます。2つの顔を持ち、3時代(ルネッサンス、バロック、モダン)を網羅する芸劇のオルガンでこそ可能な幅広いレパートリーとなっています。

 3章構成の第一部にて、みなさまと厳かな「祈り」の時間を共有できれば幸いです。

石丸由佳(オルガン)

児玉 桃

© Marco Borggreve

 開館25周年、心よりお祝い申し上げます!
 この素晴らしいホールでは、デビュー当時から、さまざまなコンチェルトのレパートリーを弾かせていただきました。
 その度に、ふくよかな響きに包まれ、活気を肌で感じて参りました。
 音楽会を客席から聞かせていただく時にはいつも、長いエスカレーターを上るあいだに、どんどんと普段の慌ただしい事々を忘れ、音楽を聞く気持ちへと変身していきます。

 今回はメシアンの、最大の愛と希望、そして喜びが溢れるトゥーランガリラ・シンフォ二ーを"HAPPY BIRTHDAY"の気持ちを込めて、東京交響楽団の皆さま、マエストロ鈴木優人さま、そして原田節さまと演奏させていただける事を名誉に思っております。
 これからも、東京芸術劇場の限りないご発展をお祈り致します。
 そして、ここで流れる素晴らしい音楽を通じて、今後も沢山の方々の心が豊かになる、スペシャルな空間でありますように!

児玉桃(ピアノ)

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