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行かなきゃもったいない!「都民音楽フェスティバル」
2026年1月、クラシック音楽ファンもそうでない人も、知っておいて損はない音楽祭がはじまる。「都民音楽フェスティバル」である。 「あれ?《都民芸術フェスティバル》なら聞いたことあるけれど、“芸術”じゃなくて“音楽”?」…と思った人は鋭い!これまで「都民芸術フェスティバル」は音楽、演劇、伝統芸能公演などを包括した芸術の祭典として半世紀以上愛されてきたが、今回から音楽を中心とした部門は「都民音楽フェスティバル」として、新たな一歩を踏み出す。開催期間はこれまでどおり、年明け松の内を過ぎる頃から春先まで。この3ヶ月間はオーケストラ、室内楽、オペラ、バレエ、子供向け公演・体験事業が目白押しになる。そしてチケット料金が平均より安価に設定されているのもこのフェスティバルの魅力のひとつ。クラシック公演は初めてという方も、これを機にぜひ気軽に劇場やホールに出かけてみてほしい。普段あまり足を伸ばさない地域を訪れて街歩きしたり、終演後は近くのお店でひと休みして、観たもの聴いたものの余韻を味わうのもすてき。なにより会場にきちんと足を運んでアーティストの息吹に触れる体験は、録音や録画で鑑賞するのとはまったく違うスペシャルな感覚をもたらしてくれる。一年のうちでもっとも寒い時期を、もっとも満ち足りた気分で過ごすのにうってつけなのだ。
「クラシック音楽には興味あるけど、何から聴いたら良いのかわからない」という方に最初におすすめしたいのが、オーケストラ公演だ。ここでは日本有数の実力を誇る在京オーケストラ8団体が勢揃いしている。気合いを入れて公演めぐりをするのもよいが、はじめは1日だけでもいいから、とにかく聴きに行ってほしい。指揮者やソリストには、日本を代表するレジェンドから、いよいよ脂の乗ってきた実力者、人気演奏家や期待の若手までが、ずらりと名前を連ねている。プログラムは音楽史に輝く王道の作品を各オーケストラが選りすぐっているし、当日は曲目解説も配られるから、初めての方でもリラックスして楽しめる。
では、以前からの音楽ファンや通は楽しめないか、といえばそんなことは決してない。スタンダードな作品を時々聴き直してみると、やはり傑作として語り継がれるだけの理由があると再確認できる。それにこうした選曲では一切のごまかしが効かない。偉大な先人たちが刻んできた演奏史に、眼前の演奏家たちがどう挑むのか、真剣勝負をぜひ見届けてほしいのだ。
「しっとりと落ち着いた雰囲気が好き」 「演奏家の表情が見える距離で、じっくり演奏を味わいたい」という方には室内楽がおすすめ。大人の贅沢な時間には、ピアノ三重奏「伝統と革新 メンデルスゾーン×ピアソラ」。好奇心旺盛な人には、珍しいチェロの四重奏「ロマンティック チェロ・カルテット」。そして日本語の美しさを名歌で堪能したい人には「日本のうた~歌曲集への誘い」。コンセプトがそれぞれなので、好みの公演を選ぶ楽しさも味わえる。
「総合芸術を体験したい」「歌もドラマも好き」という方は、オペラ公演へどうぞ。今年の注目ポイントは、ほぼ同時期に東京二期会と藤原歌劇団で、マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」を鑑賞できることだ。閉鎖的なシチリアの風土で巻き起こる激しい愛憎劇にして、ヴェリズモ(真実主義)オペラの最高峰である。カップリングに、東京二期会は鉄板のレオンカヴァッロ「道化師」を、藤原歌劇団は同団が日本初演したレア作品プッチーニ「妖精ヴィッリ」を携えてくる。さらに、日本オペラ協会の新作オペラ「奇跡のプリマ・ドンナ-オペラ歌手・三浦環の「声」を求めて-」も要チェック。プッチーニにも絶賛されたという日本人初の国際的プリマドンナ、三浦環の生涯を描くものだという。どの公演とも選りすぐりの歌手で聴けるのが楽しみだ。
「現実を忘れて美に浸りたい」「バレエを全幕観てみたい」という方には、2月から3月にかけてロマンティック・バレエの傑作「ジゼル」「白鳥の湖」「ラ・エスメラルダ」を立て続けに鑑賞できるチャンスがある。「ジゼル」(東京シティ・バレエ団)と「白鳥の湖」(牧阿佐美バレヱ団)は女性ダンサーの衣装の色が純白であることから「白いバレエ」とも呼ばれる、幻想的で美しい愛の悲劇。格調高いソリストの踊りはもちろん、一糸乱れぬコール・ド・バレエ(群舞)にも注目だ。「ラ・エスメラルダ」(日本バレエ協会)は、文豪ユゴーの「ノートルダム・ド・パリ」を翻案した、波乱の人間ドラマ。エスメラルダのバリエーションをはじめ、時にタンバリンを手にするダンサー達の劇的でダイナミックな踊りも見どころだ。
さて、最後にご紹介したいのが子供向け公演・体験事業である。これがもう…もし自分が子供の時に体験できたらどんなに楽しかっただろうと、眺めているだけでもワクワクしてしまうようなラインアップなのである。「子どもたちと芸術家の出あう街」では音楽と歌とお話、そしてスペイン舞踊をいちどきに体験できる。都内4か所で開催する「ふれあいこどもまつり」には、子供たちに本物を届けたいという熱い想いを持ったカンパニーが集結。音楽や劇、芸能などの楽しい公演や、自分で演じたり素敵なものをつくったり、思わずチャレンジしたくなるワークショップも満載だ。
劇場やホールに行くのがはじめての人も、音楽ファンもバレエファンも、大人も子供も、どんな方でも必ずフィットする企画を見つけられるのが「都民音楽フェスティバル」。どうぞお見逃しなく!
※公演の詳細は、「都民音楽フェスティバル」公式WEBサイトまたは各実施団体のホームページでご確認ください。
執筆:松平あかね(音楽評論家)