CMディレクターとして、長年にわたり数々のヒットCMを手掛けてきた山内ケンジは、青年団の山内健司さんとはなんと別人である。しかしCMを作りながら、小劇場に通いつめ、当初はいい年して若い演劇人のマネをしていたが、わかりやすい会話から入って、独自の不条理世界へじわじわと観客を引き込んでゆく作風が最近定着してきている。城山羊の会は劇団ではなく、作品ごとにキャスティングされるが、「とにかく俳優の魅力を極限まで引き出す」という点では明らかに群を抜いており、いったい、どういう演出をしているのか、との問いに山内は、「上手い人ばかりを揃えて、まったく演出をしないのです」と言っている。
今回は、鈴木浩介、石橋けい、岡部たかしら常連組に加え、オーディションで選ばれた「鉄壁のキャスティング」で、東銀座のとある会社員たちの穏やかな日常から始まる、愛と憎悪が繰り広げられるドロドロしたラシーヌのような（目標）会話劇である。