舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」

[関田育子]『under take』

[関田育子]『under take』

『雁渡』(2023)撮影:齋藤さおり

「広角レンズの演劇」を掲げる気鋭カンパニーに、「秋の隕石」は新作を委嘱する。舞台機構を露わにした劇場空間に、わたしたちの生と状況の手触りが投影される。

わたしたちが営むこの生の状況を、分析や解説によってではなく、それがまとう気配・ディテール・えもいわれぬ空気の質感、などをとらえ直す経験を通して確かめること。[関田育子]の演劇がもたらすことのひとつはそれである。その魔術を多くの観客と共有したい。それゆえ舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」はかれらに新作を委嘱した。
[関田育子]は、演劇を構成する諸要素に序列をつけない。たとえば、俳優と空間がどこまでも等価に扱われる。今回の上演も、これまでの[関田育子]の演劇がそうであったように、壁や機構を剥き出しにした舞台空間でおこなわれるだろう。その無機質な空間に、簡潔な描線による上質なマンガ表現にも似たきわめてユニークな質感の演技が、絶妙なセンスで配置される。わたしたちはいつしかそこに、わたしたちの生およびそれを取り巻く状況を投影する。舞台上には、上演の記録写真には決して映ることのないであろう情感が溢れる。
今回は会場である劇場空間の、ふだんは隠されているある機構部分を露わにする、というアイデアから創作をスタートさせる。その新作に、わたしたちの感覚はなにを投影することになるだろうか?

(岡田利規)

[関田育子]は関田育子が代表を務める演劇団体です。2019年に設立された[関田育子]は、「広角レンズの演劇」を標榜しています。これは観客に視線や距離への新鮮な感覚をもたらすために、劇場空間がもつ構造、その中にある壁や床、俳優の身体も含めたあらゆる要素を、等価とみなして創作に取り組むという態度の表明です。団体のメンバーひとりひとりが独立した個人として集まり、相互に影響を与え合いながらクリエーションのどんな部分にも全員が積極的に携わることを重視するのもカンパニーの重要な特徴です。舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」はその初の作品委嘱先に[関田育子]を選びました。独特な創作姿勢に基づいて生まれるかれらの作品が観客にとって、これまでになかった新しい知覚や認識を得るチャンスとなるだろうことを確信しているからです。この新作創作にあたって「この空間で演劇作品を創作するために必要な、新たな空間理解の視座と身体表現の在り方を共に思考していただけるクリエーションメンバーおよび出演者」を公募しました。そして数名の新メンバーが選出されています。

日程
2025年10月31日 (金) ~11月03日 (月・祝)
会場
シアターイースト
クリエーションメンバー
小久保悠人、小菜美、関田育子、土屋光、富髙有紗、林純也、
星和也、増田祥基、森山千代、横山媛香、吉田萌 ほか
プロフィール
[関田育子] SEKITA IKUKO

2019年に演劇ユニット[関田育子]として団体を設立。
俳優の身体と劇場の壁や床が、観客にとって等価に見える“広角レンズの演劇”を提唱し、その実践として演劇作品の創作を行っている。
2023年『micro wave』で「かながわ短編演劇アワード2023」⼤賞・観客賞を同時受賞。

お問合せ
東京舞台芸術祭実行委員会事務局
03-6812-1638(土日祝除く9:00~17:00)

主催:東京舞台芸術祭実行委員会
〔東京都、東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)〕

助成:文化庁ロゴマーク

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