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東京芸術祭 2023 芸劇オータムセレクション

東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『勧進帳』

東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『勧進帳』

日程
2023年09月01日 (金) ~09月24日 (日)
ステージ数
22
会場
シアターイースト
監修・補綴
木ノ下裕一
演出・美術
杉原邦生 [KUNIO]
プロフィール
木ノ下裕一

撮影:東直子

木ノ下歌舞伎 主宰。
1985年和歌山市生まれ。2006年、京都造形芸術大学在学中に古典演目上演の補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。代表作に『三人吉三』『娘道成寺』『義経千本桜―渡海屋・大物浦―』など。
2016年に上演した『勧進帳』の成果に対して、平成28年度文化庁芸術祭新人賞を受賞。第38回(令和元年度)京都府文化賞奨励賞受賞。令和2年度京都市芸術新人賞受賞。平成29年度京都市芸術文化特別奨励制度奨励者。
渋谷・コクーン歌舞伎『切られの与三』(2018)の補綴を務めるなど、古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。


【木ノ下裕一 コメント】
今までに増して、一枚のチケットが重くなっているようです。
疫禍にも収束の光が見えつつあると言っても、依然として突然の中止があり得る世界において、作り手と観客が同じ時と場を共有する舞台芸術はまさに一期一会。お客さまもまた、時間的な余裕と、経済的な余裕を見極めながら、今見るべき一本の舞台を、慎重に選んでいるように見受けられます。
一方、ますます格差が広がっていく社会の中で、誰もが気軽に娯楽や文化芸術を享受できなくなりつつあるのだとしたら、〝公共劇場〟の意義と責任はより重大です。そんな中、東京芸術劇場さんと一緒に『勧進帳』を上演いたします。公共劇場とカンパニーが協同することで、何ができるのか。少しでもクオリティの高い作品をお客様のお目にかける以外にも、まだまだやれることがあるのではないか。より作品をお楽しみいただくための講座、知的好奇心を刺激するための関連イベント、中高生へ向けた鑑賞会、障がい者への観劇サポートなど、ありったけの知恵を絞って、少しでも皆様の傍に〝寄り添える〟公演を目指します。
思えば、『勧進帳』は、登場人物全員が、寄り添えないはず(立場上寄り添ってはいけないはずの)の他者に、それでも少しずつ寄り添おうとする物語でもありました。
「この公演は自分のためにあった」と、お客様お一人ひとりに思っていただけるように、心を込めて臨みます。チケット一枚の重さを受け止めながら。

杉原邦生

撮影:細野晋司

演出家、舞台美術家。KUNIO主宰。
2004年、プロデュース公演カンパニー“KUNIO”を立ち上げる。これまでの KUNIO の作品に、『エンジェルス・イン・アメリカ 第 1 部「至福千年紀が近づく」 第 2 部「ペレストロイカ」』、“Q1”バージョンを新訳で上演した『ハムレット』、上演時間10時間に及ぶ大作『グリークス』、大学の恩師でもある太田省吾作品を鮮烈に蘇らせた『更地』などがある。近年の主な演出作品は、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』、シアターコクーン『プレイタイム』、PARCO劇場オープニング・シリーズ『藪原検校』、さいたまゴールド・シアター最終公演『水の駅』、COCOON PRODUCTION 2022 / NINAGAWA MEMORIAL『パンドラの鐘』、ホリプロ『血の婚礼』など。第36回京都府文化奨励賞受賞。
https://kunio.me


【杉原邦生 コメント】
2016年にリクリエーションした木ノ下歌舞伎版『勧進帳』を5年ぶりに上演できること、
とても嬉しく思っています。と同時に、初演時よりさらに目まぐるしく移り変わるこの時代に、7年前の作品が未だ〈チカラ〉を持ち得ているのだろうかと、少しだけ不安を感じたりもしています。
ですが、そもそも歌舞伎の『勧進帳』も、“能の『安宅(あたか)』を歌舞伎化する”というアイデアから創作され、初演から今日に至るまで形を変えながら練り上げられ、幾たびも上演されてきました。その事実こそが、古典芸能の〈チカラ〉を証明していると言えるかもしれません。ということは、“歌舞伎の『勧進帳』を現代劇化する”という野心的な試みによって生まれた僕たちの『勧進帳』も、こうして時代の変化とともに上演を重ねていくことで、日本の古典芸能、さらには、日本の舞台芸術の〈チカラ〉を証明することに繋がっていくはずそんな野望を胸に、ただただ良き上演を届けられるよう、粛々と準備を重ねています。
皆さまのご来場お待ちしております。

出演

リー5世 坂口涼太郎 高山のえみ
岡野康弘 亀島一徳 重岡漠 大柿友哉

スウィング:佐藤俊彦 大知

配役表は こちら

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あらすじ

鎌倉幕府将軍である兄・源頼朝に謀反の疑いをかけられた義経たちは、追われる身となり奥州へ向かっていた。
道中の加賀国(※1)・安宅で、義経一行は自らを捕らえるための関所に行く手を阻まれる。義経は強力(※2)の姿、家来たちは山伏の姿に化けて関所を通ろうとするが、関守の富樫左衛門には山伏姿の義経たちを捕らえるよう命令が下されていた。そこで武蔵坊弁慶は機転を利かせて、焼失した東大寺を再建するため勧進(※3)を行っているのだと話す。すると富樫は、弁慶に勧進帳(※4)を読むよう命じるのだった。もちろん勧進帳など持っていない弁慶は、別の巻物を開くと、それを本物と見せかけて勧進帳の文言を暗唱してみせた。その後も一行は山伏を演じきり、関所を通る許しを得る。しかし、ふとしたことから強力が義経ではないかと疑われてしまった。緊迫した状況のなか、弁慶は義経をどこまでも強力として扱い、杖で打ち据える。それを見た富樫は、頼朝の命を破り、一行を通してやるのだった――。

 

(※1)現在の石川県小松市。
(※2)山伏に伴って荷物を運ぶ従者。
(※3)寺院の建立・修繕などのため、信者や有志者に説いてその費用を奉納させること。
(※4)勧進の目的について記された巻物形式の趣意書。

 

勧進帳相関図

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主催:東京芸術祭実⾏委員会[公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団
(東京芸術劇場・アーツカウンシル東京)、東京都]

助成:一般財団法人地域創造
協賛:アサヒグループジャパン株式会社

制作協力:一般社団法人ベンチ

企画制作:東京芸術劇場・木ノ下歌舞伎/一般社団法人樹来舎

*本事業は東京都「笑顔と学びの体験活動プロジェクト」の参画プログラムです。