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2015-2016 海外オーケストラシリーズⅢ

フランクフルト放送交響楽団

フランクフルト放送交響楽団

楽団に新風を吹き込んだオロスコ=エストラーダが、
果てしない感動の世界を描き出す。

 

 1929年創立のフランクフルト放送交響楽団は、日本では、インバルが率いていた時代(1974~1990年)に行ったブルックナーとマーラーの交響曲全集のレコーディングによって、一気にブレイクしたオーケストラである。熱心なファンの間では、ヘッセン放送交響楽団と名のっていた時代に、フルトヴェングラーが指揮台にのぼり、自作の交響曲第2番のライヴ録音を残していることでも知られている。このオーケストラが培ってきた鮮烈な表現能力は、折り紙付きであり、2014年までパーヴォ・ヤルヴィ(現在は桂冠指揮者)が率いていた時代にレコーディングしたブルックナーの交響曲では、インバル時代とはひと味もふた味も違うサウンドを聴かせてくれたのは、記憶に新しいところである。
 コロンビア・メデジン出身のアンドレス・オロスコ=エストラーダ(1977年生まれ)は、ウィーンで研鑽を積んだ経歴の持ち主で、オーソドックスなアプローチを踏まえながら、音楽をフレッシュに息づかせることができる手腕を備えた逸材だ。2014年に音楽監督に就任して以来、フランクフルト放送交響楽団に新たな時代の幕が上がった、と高く評価されているだけに、当コンビの演奏に早くも接することができるのは嬉しい限りである。
 今回の公演では、前半がロシア物、後半にドイツ音楽の王道を往くブラームスの交響曲第1番という構成になっており、このコンビのさまざまな側面が楽しめることだろう。卓越した技巧と鮮やかなセンスを兼ね備えたアリス=紗良・オットが、チャイコフスキーの名作のソリストとして登場するのも期待大である。

 

満津岡信育(音楽評論)

日程
2015年11月19日 (木)19:00 開演 (ロビー開場 18:00)
会場
コンサートホール
曲目

グリンカ/歌劇『ルスランとリュドミラ』 序曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23
ブラームス/交響曲第1番 ハ短調 op.68

出演

指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ

ピアノ:アリス=紗良・オット
管弦楽:フランクフルト放送交響楽団

プロフィール
アンドレス・オロスコ=エストラーダ(指揮&音楽監督)
Andrés Orozco-Estrada, Conductor & Music Director
アンドレアス・オロスコ=エストラーダ

© Martin Sigmund

アンドレス・オロスコ=エストラーダは、2014/15シーズンに新たに就任したフランクフルト放送交響楽団(hr-Sinfonieorchester)の音楽監督である。同時期に、ヒューストン交響楽団の音楽監督に就任。2013年には、世界最高峰のオーケストラ、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団が、2015/16シーズンから彼を首席客演指揮者とすることを決定した。1977年、コロンビアのメデジンに生まれ。音楽はヴァイオリンから始め、15歳のとき指揮の勉強を始める。97年、ウィーンへ渡り、権威あるウィーン国立音楽大学で、伝説的指揮者ハンス・スワロフスキーの弟子であるウロシュ・ラヨビチに指揮を学んだ。オロスコ=エストラーダは、同世代の指揮者のなかでもっとも人気のある一人である。04年、急遽、ウィーン楽友協会でウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団のコンサートを指揮、一躍国際的注目を浴びた。そのコンサートは「ウィーンの奇跡」と称賛された。09年~15年まで、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団の首席指揮者を務めた。また09年~13年まで、バスク国立管弦楽団(エウスカディ交響楽団)の首席指揮者を務めた。現在までに、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、マーラー室内管弦楽団、ロンドン交響楽団、バーミンガム市交響楽団、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団、フランス国立管弦楽団などのオーケストラと共演している。最近のデビューおよび今後のデビュー予定としては、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(アムステルダム)、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ピッツバーグ交響楽団、クリーヴランド管弦楽団との共演がある。また、オペラの指揮者として、シュトゥットガルト州立歌劇場やグラインドボーン音楽祭などに招待されている。

アリス=紗良・オット(ピアノ) Alice Sara Ott, Piano
アリス=紗良・オット

© Marie Staggat

ドイツ人と日本人の両親をもつピアニスト、アリス=紗良・オットは、5年足らずのうちに世界各地の主要なコンサート・ホールで演奏し、批評家の絶賛を博すとともに、今日最も刺激的な音楽家の一人として確固たる地位を築いた。
 近年は、フランクフルト放送交響楽団(パーヴォ・ヤルヴィ)、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(ロリン・マゼール)、フィルハーモニア管弦楽団(ヴラディーミル・アシュケナージ)、フィンランド放送交響楽団(ハンヌ・リントゥ)、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団(ワシーリ・ペトレンコ)、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団(チョン・ミョンフン)などと共演、2014-15シーズンには、シカゴ交響楽団 (パブロ・ヘラス=カサド)、インディアナポリス交響楽団(クシシュトフ・ウルバンスキ)、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団(トーマス・センデゴー)との初共演が予定されている。また、ロンドン交響楽団(ジャナンドレア・ノセダ)、バイエルン放送交響楽団(エサ=ペッカ・サロネン)、NHK交響楽団(ジョン・ストゥールゴールズ)などとも再共演をする。
 2008年よりドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、リストの超絶技巧練習曲集、ショパンのワルツ全曲を収めたアルバムの他、ヘンゲルブロック指揮/ミュンヘン・フィルとの共演によるチャイコフスキーとリストのピアノ協奏曲第1番、ムソルグスキー《展覧会の絵》(白夜祭ライヴ録音)は全世界でリリースされた。
 2014年には初のピアノ・デュオ・プロジェクトとして、フランチェスコ・トリスターノとバレエ・リュスをテーマとしたアルバム「スキャンダル」 が全世界でリリースされ、2014年6月より日本、韓国、オーストラリアでのツアーを成功に収め、2014/2015シーズンにはシュトゥットガルト、ルクセンブルク、ベルリン、ロンドンなどのヨーロッパ主要都市でのツアーを予定している。
 2014年1月より「音楽の友」にて、エッセイ「アリス=紗良・オット ピアニスト 世界を巡る」を連載中。

フランクフルト放送交響楽団(管弦楽)
hr-Sinfonieorchester (Frankfurt Radio Symphony Orchestra)
フランクフルト放送交響楽団

© BenKnabe

フランクフルト放送交響楽団(hr-Sinfonieorchester)は、今日、ヨーロッパで最も優れたオーケストラの1つである。創立以来85年の歴史を誇り、バロックから現代の前衛音楽に至るまで、あらゆる時代と様式の音楽で質の高い演奏を提供している。世界中の権威ある舞台への出演依頼も多く、これまでにロンドンの“プロムス”やアムステルダムの“コンセルトヘボウ”、また、ウィーン、ザルツブルク、パリ、ブダペスト、プラハ、さらには日本や中国でもツアーを行っている。フランクフルト放送交響楽団は、1980年代にロマン派および後期ロマン派の楽曲の新たなスタンダードとなる革新的なCD録音を行って注目され、今では世界一流のマーラーおよびブルックナー演奏のオーケストラと評価されている。エリアフ・インバルから始まったこの音楽的伝統は、ドミトリー・キタエンコ、ヒュー・ウルフが音楽監督だった時代を経て、現桂冠指揮者パーヴォ・ヤルヴィ、そして新首席指揮者アンドレス・オロスコ=エストラーダへと受け継がれている。

主催:東京芸術劇場 (公益財団法人東京都歴史文化財団)