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二人の芸術監督 岡田利規・山田和樹 往復書簡 第1信

舞台芸術部門芸術監督の岡田利規と、音楽部門芸術監督の山田和樹。
ともに世界を舞台に活躍する二人は、直接顔を合わせてじっくり語り合う機会はそうありません。
そんな二人が、日頃考えていること、芸術に寄せる思い、そして劇場の未来について語り合うために始めたのが、この往復書簡です。
そのやりとりは、舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」で上演されるコラボレーション企画『静寂のガツンとした一撃』(2026年10月25日)の準備から始まりました。
互いへの問いかけや応答のなかには、作品創りへの視点や芸術への考え方、劇場という場に託す思いが垣間見えます。
不定期でお届けするこの往復書簡を通して、二人の対話がどのように広がっていくのか。二人が交わす言葉の往還から立ち現れる、芸術と劇場の新たな風景。
どうぞご期待ください。

第1信

山田和樹さま

こないだのサントリーホールでの、山田さん指揮のマンチェスター交響楽団のコンサート、堪能いたしました!ぼくはクラシック音楽のコンサートあまり行かないのですが(なにせ、サントリーホールに行くの初めてでした◎)、いやあ愉しいものですね。何も考えずに心と身体をふくよかな音の響きの緩急に委ねる時間を過ごせるのがなにより気持ちいいです。これであれば、日中に仕事などでエネルギーを使い、夕方過ぎたころには消耗しているとしても、疲れているからコンサート行くの億劫だなあ、とはならないですよね。むしろ恢復できる。そういうところ、音楽っていいな。

舞台は必ずしもそうではないです。舞台を見るのはそれを通して思考を活性化させることで、思考を働かせるのは疲れますのでね(笑)。でも、それがなにより愉しいことである、というのがぼくの立場です。
舞台があって客席がある。舞台上でパフォーマンスが行われ、客席のオーディエンスがそれを鑑賞する。そのかぎりではコンサートと演劇やダンスの公演は変わらないと言える。でも、ほんとうに全然違うなとおもいます。そのうえで、そのように全然違う音楽と舞台芸術が、一緒になにかやる、というプロジェクトを東京芸術劇場としてやりたい。その第一弾を、山田さんとぼくとのコラボレーションとしてやりたい。そしてやる以上は、根本的なところから考え始めたい。そしてとにかく試行錯誤したい。それらのための手がかりを見つけたくて、ぼくはこれを書いています。これは、山田さんとぼくとの往復書簡です。これはその記念すべき第一便です。ぼくからサーブを打ちます。今後、構えずラフにラリーしていけたらとおもいますので、ぼくも今これとてもカジュアルに書いてます。
ジャンルの「垣根を越える」っていう言い回し、よく使われますよね。でも形骸化した慣用句になりかけているような気もする。この言葉を、もっと真に受けてみたい。たとえば、「垣根を越える」ってなんだか他人の敷地に不法侵入してるようなイメージを喚起させませんか?そういう気持ちになってしまうくらいのことをやってみたいな、ということです。

東京芸術劇場に足を運んでくれるお客さんがいらっしゃいます。そのなかには「東京芸術劇場」とは実質コンサートホールのことを指している方たちがいるでしょう。プレイハウスやシアターイーストやシアターウエストのことを指している方たちもいるでしょう。それが混じり合うようなことが起こったらそれは結構世の中を変容させているっていえるようなことだとおもうんです。もっとも、そんなことを起こすのはものすごーく難しいでしょうが、でもそこを目指したいんです。どうでしょう?

 

2025年9月24日
昼過ぎにスコールのような雨が突如降り始めた熊本にて
岡田利規
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