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二人の芸術監督 岡田利規・山田和樹 往復書簡 第2信

舞台芸術部門芸術監督の岡田利規と、音楽部門芸術監督の山田和樹。
ともに世界を舞台に活躍する二人は、直接顔を合わせてじっくり語り合う機会はそうありません。
そんな二人が、日頃考えていること、芸術に寄せる思い、そして劇場の未来について語り合うために始めたのが、この往復書簡です。
そのやりとりは、舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」で上演されるコラボレーション企画『静寂のガツンとした一撃』(2026年10月25日)の準備から始まりました。
互いへの問いかけや応答のなかには、作品創りへの視点や芸術への考え方、劇場という場に託す思いが垣間見えます。
不定期でお届けするこの往復書簡を通して、二人の対話がどのように広がっていくのか。二人が交わす言葉の往還から立ち現れる、芸術と劇場の新たな風景。
どうぞご期待ください。

第2信

岡田利規さま

岡田さんから、サーブを打っていただいたのに、お返事遅くなってしまってすみません。生来の筆不精で、というか、岡田さんのお仕事の早さにはまったく脱帽でして、学ばせていただいております。巌流島の宮本武蔵を模倣している訳ではまったくないのですが、どうも僕のペースは周りの人をヤキモキさせてしまう傾向が強いらしく、大変申し訳なく思っています。

もう少し言い訳をします(笑)。
岡田さんは、「構えずラフにラリーを」「カジュアルに書いています」と仰っていただきましたが、岡田さんがカジュアルにお書きになるものでさえ、大変知的な立派な文章でして、こちらとしてはやはりちゃんとお返事しなくては、という意識が働いてしまうのですね。なので、かなり時間をいただいてしまいました。
が、今日ふと思ったのです。このような“違い”にスポットを当ててみるのも面白いかなと。
「時間」というのはまったく不思議なものです。メトロノームのように確実一定のようにも思えるのですが、一方で伸縮性のあるものでもあります。(科学的には、時間も空間も歪む、と証明したのはアインシュタインでしたよね。岡田さんは相対性理論などそちらの方にも興味があったりしますか?)岡田さんとのコラボレーションを考える中で、やはり演劇と音楽との「共通項」「相違点」は何かという思考になるのですが、「時間」というものは共通項になってくるのかなと。
❛音楽は時間芸術である❜  という言い方はよく耳にするのですが、❛演劇は時間芸術である❜  という言い方もよくされるものなのでしょうか?演劇も音楽も、時間の経過なくして成立しないものなのですよね。もちろん、それは我々の人生も同じで。ただ、これほどまでに個々人の時間のペースが違うものになった時代はなかったと思うのです。昔は、それこそ手紙を郵送するしかなかった頃は、みんながみんなそのペースを共有していたように思うのです。ですが、メールやメッセージが飛び交う現代となっては、人によって時間のペースが違う、もっと言ってしまうと、人生のペースが違う時代になったのかなと思ったりします。
例えば、ベートーヴェンの交響曲1曲演奏するのに30分かかるとして、それはベートーヴェンの生きていた時代も、我々が生きる現代も、同じ30分という時間のはずなのに、同じ感覚ではないと思うのです。ベートーヴェンがメトロノーム60と指示した曲では、一拍が一秒という事実は変わらないはずなのに、当時と今では何か違う気がするのです。
そして、指揮者というのは、その「一秒をどう感じるのか」に拘る職業でもあるのですが、演出家も同じだったりするのでしょうか?実際の一秒という時間は変えようがないにしても、感覚的にはそれを短くも長くも出来ると思うのですね。
岡田さんと話してみたいことは尽きません。とても刺激的なのです。それは、どこかで同じ部分もありながらも、やはり違う世界に生きてらっしゃるからなのだと思います。不法侵入的「垣根越え」。是非やりたいです!

お客様、というこれまた摩訶不思議な存在に対しての向き合い方も考えていきたいところです。現代では、お客様が内容を“予想できる”興行を通じて、我々の交歓は成り立っていると思うのですが、それこそお客様の予想を裏切るような、それでも幸せになっていただけるような、そんなプロジェクトを岡田さんとご一緒できたら本当に嬉しいです。
多分に抽象的で、岡田さんからのサーブをうまく打ち返しているか分からないのですが、もっと考えてしまうともっと時間がかかってしまうので、ここでお返事をすることにします。
岡田さんのペースを乱していたら本当に申し訳ないのですが、時には、岡田さんが予想しなかったようなびっくりしたスピードでお返事する、これが目標だったりします。末永くお付き合いいただけたら大変に幸いです。

 

2025年10月29日
サマータイムを終えて一気に冬に突入し始めたベルリンにて
山田和樹
追伸
岡田さんにいらしていただいたコンサートは、マンチェスター交響楽団ではなく、バーミンガム市交響楽団でーす。でも、楽しんでいただけたのなら、それが一番です。
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